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保育士辞職で保育園が休園 検討すべき保育士の待遇!?
東京・世田谷区にある同じ会社が経営する保育所2施設が、保育士ら18人が一斉退職して、休園を余儀なくされた。保育士が一斉にやめるには、それなりの理由があるはず。児童育成協会によると、辞めた保育士らは「給料の未払い」があったと語っているが、経営者は否定している。
休園に追い込まれたのは 「子どもの社」企業主導型保育所2施設。
児童育成協会によると、10月31日にひとつの保育所で保育5人を含む7名が、もう一つの施設でも同日に保育士7人を含む11人が一斉に退職したということが分かった。
ひとつの保育所は11月から休園。もうひとつの保育所では保育士を確保し乳幼児の受け入れを続けているようだが、保護者からは「0歳児の保護者が送迎時に、ひとりの保育士が8人の子どもを見ていたという状況だった。」と話しているという。
これが本当であれば、この時点で保育士配置基準に違反しているということになる。
(プライムニュース記事より)
企業主導型保育所とは
企業が従業員向けにつくる「認可外」の保育施設ですが、児童育成協会によると、子どもの社の場合、2つの保育所で合わせて24の別々の会社が設置者になっているということ。
企業主導型保育所は保育士の半分が「資格なし」でも勤務ができるという配置する人数の基準などが緩和された一方で、建物などの整備費や施設の運営費への助成金は「認可並み」に手厚く支払われることから、「認可型保育所よりもつくりやすいという理由で、全国で数が増え続けている。
これは、何かあっても事業主のほうには責任がなくて責任の所在があやふやになるという理由があるのかもしれない。
保育士の待遇
保育士は、尊い命を預かり、個別の成長や発達を助ける誇り高い仕事である。
けれども、小さい子どもへのお世話は誰にでもできるかのように考えられていて、給料は以外にも少ない。
0歳児から2歳児にはおむつ交換や抱っこでの肉体疲労、また抱き続けていないと泣き叫ぶ子どもへの対応などから、腱鞘炎になることも少なくない。また、「突然死」などのリスクを抱えて、「薄給ではやってられない!」という感覚を持つ保育士も多い。
託児とは違い、幼稚園と同様の保育を提供することを目指す保育所。
生活経験では幼稚園で過ごす子どもより、豊富である。
そんな保育所で、肉体的にも精神的にも有用な役割を担っているにも関わらず
命を預かるというリスクを背負わされるに値しない給料ではないかと考えられる。
言葉の通じない乳幼児の気持ちを読み取りながら、0歳児を人として尊重する保育の提供をする
集団の中で配慮した個別の対応をする保育士の仕事量は計り知れない。
そのことから見ても、本来なら多額の給料を受け取ってもおかしくない。
それなのに、保育士の給料はいつになっても上がらず、しんどさだけが印象的なものになる。
質を落とさずに多くの子どもを受け入れて保育することは、かなりの負担となり、それが保育士の退職の要因のひとつであろう。
政府はそういう保育の本質を考慮し、 新たな保育士の給与制度を考えるべきである。
保護者の困り感
子どもを預けて仕事を従事する保護者にとっては、保育所はなくてはならないもの。
その保育所が突然休園になったら、いったいどこに預ければいいのか、保護者はたちまち困ってしまう。
同系列の保育所も保育士の退職により受け入れる状態ではなく、頼れる身近な人がいれば何とかなるかもしれないが、子どもを連れて職場に行くか、自宅でできる仕事なら自宅でする、また休暇を取って子どもを保育する保護者もいたはずである。
子どもの困り感
さらに、困っているのは子どもたち。
今まで慣れた先生がいなくなったところで、別の保育所に預けられたとしても、全く知らない場所に置いてけぼりになったと同様の状態。
人と人との信頼関係はそんなに短期間で成立するものではなく、日々のお世話やあそびを共にする中で、「この人と遊ぶと楽しい。」「この人は困った時に助けてくれるひとだ。」と感じることから、次第に信頼関係が作られていくのである。
また、決まった大人からの愛情あるケアを受けることで愛着関係も成立していくことで、安定した集団生活を送ることができるようになっていくのである。
まとめ
実際に「子どもの社」が運営するこの2保育所で、どのようなことがあったのかはその当事者にしかわからないことであるが、少なくとも働きやすい環境であれば、多くの職員が一斉に退職することは考えにくく、何らかの原因が運営者側にあったとしか考えられない。
子どものためにも、働く者のためにも、預けやすく、また預かる立場の保育士や職員にとっても、働きやすい環境づくりを、国全体のこととして考えていくべきである。
一番の弱者である子どもたちが、早く落ち着いて安定した時間を過ごせることを願う。