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当番活動で育つもの
幼稚園や保育所の集団生活の中で、家庭でももちろんあると思いますが、
子どもが「それぞれの役割を果たす」という事を経験する機会があるでしょう。
それが、幼児の集団生活の中では、「当番活動」として定着しているのだと思います。
子どもが成長発達していく過程で、「当番活動」がもたらす効果とはどのようなものがあるでしょう。
今から「当番活動で育つもの」を考えていきたいと思います。
「当番活動」とは
保育所や幼稚園で朝から一定時間友だちと共に生活する中で、〈一緒に遊ぶ〉〈一緒に食べる〉〈一緒に寝る〉など
みんなで一緒に活動するのが当然たくさんあります。
その中で、「自分でできる事は自分でしましょう。」と、先生から言われるでしょう。
もちろん、身辺自立はすべきです。
ひとりっ子で何も出来ないなんて、困りますからね。
だけど、それぞれが自分のことを自分でするだけで、全てが進んでいくわけではありません。
友だちと一緒に遊べば、片付けも一緒にするし、砂場での山づくりなどは、たくさんの仲間とともに力を合わせることで、
大きな砂山がひとりで作るより早くできるという事もあります。
給食はどうでしょう?
お昼寝はどうでしょう?
ひとりで全てするより、仲間と助けあって準備したら、どうでしょう?
準備してもらったらどんな気持ちになるでしょう。
準備してあげたら、なんて言われるでしょう。
ひとりでもできる事。
だけど仲間とできたら、仲間にしてもらったら、仲間にしてあげることができたら
どんな関係になるでしょう。
きっと、「やってもらってありがとう。」という感謝の気持ちや
感謝されて誇らしい気持ちになるのではないでしょうか。
実際に、誰かに感謝されることって、自分が誰かの役に立っているって事を実感できる体験なのではないでしょうか。
そんな体験を積み重ねることで、『人の役に立つことがしたい』という、将来の仕事願望に結びつくのではないでしょうか。
当番活動の内容
当番活動は、子どもたちが自分たちのできる事を手分けしてします。
こんな事できるのかしら(?)と、少し難しいなと思う内容でも
初めにその手順を知らせてやると、とても慎重にその役割を果たそうとがんばります。
そして、もちろん失敗する事もあるけれど、失敗しないほうがおかしいので、なぜ失敗しちゃったのかを一緒に分析して次はそうならないように工夫することを伝えます。
一度失敗した子どもは、もう失敗しません。
だって、経験で学んだから。
なんども繰り返し失敗する子どもがいたら、それは仕事の内容を見直すか、大人が一緒にやり方の工夫を考えたり、友だちのやり方を見たり、友だちの工夫を聞いたりすると、モデル(マネる対象)ができるので、言葉だけで「こうしたほうがいい。」と言っているよりずっと、早く理解でき、早くマスターできるはずです。
これこそが、集団生活のいいところです。
家庭では、一般的に年上の兄姉や年下の妹弟がいても、同年の子どもがいるところはあまりないはずです。
「お兄ちゃんだからできるんだ。」とか「妹よりはできる。」など、年齢差があるとその分経験値も違うので、比較する事は難しくなります。
年上の兄姉はモデルにはなりうるけれど、出来なくても自分の方が年下だから・・と出来ないことを年齢差のせいにしてしまうこともできます。
けれども、クラスの友だちは誕生月の差こそあれ、同年です。
「あの子にできてるんだから、僕もできるはず!」とがんばる意欲が湧いてきます。
湧いてこない子どももいるかも知れませんが、そこは、意欲的になれるような工夫が大人がわに必要ですよね。
ごほうびカードを作製して、シールを貼ったり、ニコニコマーク😊を書いてあげるだけで、がんばろうという気持ちになります。
給食当番や布団当番、菜園活動をしていれば水やりや草引き、ゴミ集め当番や、掃除当番もいいですよね。
私の勤める園では、ミミズコンポストをやっているので、みみず当番というのもあります。
当番活動で学ぶこと
当番の活動を通して学ぶのは、それぞれの当番活動の仕事を通した道具を使うスキルや、動物への愛護精神や、「みんなのためにやってあげた。」という達成感や満足感だけではないのです。
〈どの仕事をするのか〉を、ぐるぐる回る方法で順番に巡るのではなく、グループごとにひとつの仕事の中身を細分して、グループのメンバーが5人なら5つの役割を考えてその役割を選ぶことから始めることが、大切です。
・どの役割りにしようかと選ぶ(自己決定)
・自分はこの役割がしたいとメンバーに伝える(自己主張)
・希望が重なったときに譲るのか、どうしてもやりたいと自分を優先してもらうように頼むのか(交渉力)
・自分(友だち)がしたい役割を誰かひとりが独占していないかに気付けるか(分析力)
・友だちが主張している役割を独占している子どもから、友だちに替わってもらうように仲介できるか(調整力)
・グループ全体をみてそれぞれが公平に希望する役割を主張し調整することができていない場合、どのように公平に活動することができるかを考えられるか(統率力)
自分の顔写真にマグネットをつけて、当番の役割ごとに枠を作り、その枠に希望する子どもが顔を置いていきます。
そうすることで、主張したことや調整したことを頭の中の記憶に頼るだけではなく、目に見える形で当番の役割を決めていきます。そんな話し合いを毎日繰り返しすることで、次第に上記のような力がついてくると、実感しています。
それは、3歳時クラスでも、4歳児クラスでも、5歳児クラスでもそうです。
保育所では、0歳児でもお手伝いという名の下に、当番の基礎になるお手伝い(エプロン配り)の仕事をしてくれます。
1歳児も友だちのことをよく知っていて、文字を読むことなどできないけれど、順番がわかったり、やりたいけれど今日は別の友だちの番だと我慢したり、特別に注目され、友だちと先生に「ありがとう」と言われ、それはもう満足した気持ちを満面の笑顔で表現してくれます。
当番活動は、その年齢によって活動内容は違っても、一人ひとりに自己肯定感を持たせてくれる 確かな活動です。
当番活動で育てる仲間関係
そして、当番を通して自己肯定感とともに育つのが、仲間関係です。
自分だけが良ければいいと考える子どもももちろんいますが、誰かが自分に希望する役割をすることができなくて悲しんでいる事に気づき、その気持ちを代弁したり、調整したりする事で、互いに尊重しあえる仲間関係が築けるのです。
本当に困っている時や、悔しい時、悲しい時に助けてもらったら、どんなに心強く嬉しい事でしょう。
助けてもらった子どもは、いつかしてもらう立場ではなく、してあげる立場になっていくのではないでしょうか。
そんな風に、毎日関わりあう機会を意図的に作ることが大切な力を育む事になっていくのだと考えます。
そして、その中で「公平感覚を身に付けて、不公平なかかわりに気づき、公平で対等な関係を自らつくり出す」
そんな力を持つ人になってほしいですね。
あなたのクラスにも、ぜひ、考え話し合う当番活動を・・・・