『傷ついた親子に幸せを与える小児神経科医・友田明美さん』

11月5日(月)夜10:25 児童相談所への相談件数が13万件を記録する中、親子を励まし伴走する、ADHDや自閉症、虐待による心の傷など、子どもの”心”を診(み)る小児神経科医・友田明美さんにNHKが密着した記録。

NHK総合テレビで放送の友田明美さんについて、また友田明美さんの研究について『児童虐待』とその『発達障害』の関係とも合わせて考えてみた。

 

『友田明美さんとは』

 

友田明美さん57歳(女性)は、1987年熊本大学医学部卒業後、翌年博士(医学)号を取得。

現在は福井大学子どものこころの発達研究センター発達支援研究室および福井大学附属病院子どものこころ診療部で小児科医として、子どもの発達に関する診療・研究・教育に携わっている。

虐待が脳に与える影響を世界で初めて実証し、研究の分野でも最先端を行く。

 

人間に対する興味から人間を対象とする「医学」を学び始めた友田明美さんは、

研修医の時のある経験をきっかけに「児童虐待(じどうぎゃくたい)と脳の発達」を研究するようになった。

研修医として勤務していた鹿児島の病院に、脳内出血で救急外来に運ばれてきた子どもは、全身にはタバコによる火傷の跡があり、救命措置を施し、集中治療室での3日間寝ずの看病にもかかわらず助からなかった。

「無償の愛を注ぐべきはずの親が、子どもに対してなぜこんなにもひどい仕打ちをするのか・・・」

友田明美さんは、この問題を何とかしたいと思い、「児童虐待と脳の発達」の研究を始めた。

現在は大学の院生、国内外の研究者たちと、MRIという、脳の画像が撮(と)れる機械を使って子どもたちの脳を調査。児童虐待を受けることで脳の大事な部分に「傷」がつく、ということ。

この傷がずっと続くから、虐待を受けた子どもは大人になってもつらい思いをする。今後はこの傷をどうやって治していくか、そのことを目指して研究を続けている。

子どもにイライラする母

 

増え続ける『児童虐待』

 

友田明美さんが、研修医として病院で看病した子どもは、『脳内出血』で搬送されてきた。

その子どもの身体には、タバコを押し付けてできたやけどの跡が全身に見られた。

そこから考えられるのは『児童虐待』。

テレビでも、『児童虐待』で子どもが死亡して親やそのパートナーが逮捕されるニュースが流れる。

記憶に新しいところでは、2018年6月6日、東京都目黒区で船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5歳)が死亡し、両親が保護責任者遺棄致死の疑いでという事件。

命を落としたのは5歳の結愛ちゃん。死亡時の体重は平均体重を大きく下回る12.2キロだったという。

両親は十分な食事を与えず栄養失調状態に陥らせたにもかかわらず、医療機関で受診することもなく放置していた。これは『児童虐待』のひとつである育児放棄(ネグレクト)の典型的なものである。

結愛ちゃんが残したノートには、次のように書かれていたという。

ママ もうパパとママにいわれなくても しっかりじぶんから きょうよりか
あしたはもっともっと できるようにするから もうおねがい ゆるして ゆるしてください      おねがいします ほんとうにもう おなじことはしません ゆるして
きのうまでぜんぜんできてなかったこと これまでまいにちやってきたことを なおします       これまでどんだけあほみたいにあそんだか あそぶってあほみたいだからやめる
もうぜったいぜったい やらないからね ぜったい やくそくします

 
子どもは遊ぶもの。あそびを通して様々な力をつけていくもの。
 
それなのに結愛ちゃんは、あそぶことで叱られるという親からの仕打ちを受けていたと想像できる。
大人にとっての「あそび」と子どもにとっての「あそび」は同じではない。
それなのに5歳にして、「あそぶことをやめる」と自ら書き記し、
「私をゆるしてほしい」と願わなくてはならなかった。
そんなふうに自分を戒めたにもかかわらず、命を落とした。
 
泣いている女の子モノクロ

直接命を落とすことにつながったのは『ネグレクト』ではあるが、結愛ちゃんがあそぶことをあきらめようと考えたのは、親からの言葉による脅(おど)し『心理的虐待』があったからと推測できる。

この事件に関しては、香川の児童相談所が2度も結愛ちゃんを保護していたにもかかわらず、引き継いだ品川の児童相談所では踏み込んだ対応ができず取り返しのつかない結果となり、対応を非難する声は大きいが、児童相談所や警察だけの責任ではなく、この問題は私たちすべての大人の責任であると言われている。

悪魔のような親を断罪するだけでは、子どもの命は決して救えないのである。

 

『育てにくさ』と『児童虐待』

 

友田明美さんの研究で、『児童虐待』によるトラウマが発達を阻害することがあり、それが『発達障害』に似た症状として現れるということがわかってきたという。

自閉症スペクトラム障害(ASD)や、注意欠陥多動性障害(ADHD)を含めた発達障害を持つ子どもたちには、特有の 『育てにくさ』があり、その『育てにくさ』ゆえに『児童虐待』に至ってしまう。

また、『児童虐待』を受けた子どもが大人になったときに『愛着関係』をうまく子どもと結ぶことができないということも現在の大きな社会問題である。

このようにすべてが関わり合って『児童虐待』が増加していることは、否めない事実である。

脳

友田明美さんは福井大学子どものこころの発達研究センター教授副センター長、福井大学附属病院子どものこころの診療部長として、『発達障害』と言われる子どもや『児童虐待』によって脳が傷ついた子どもの”心”を診るということを通して、子どもの心の回復を助け続けている。

また『育てにくさ』を持つ子どもの保護者の悩みにも向き合っている。

 

友田明美さんの研究が進み

『児童虐待』によって脳が傷ついた子どもが大人になったときに

『児童虐待』を繰り返さないよう、その傷を治す方法の発見に期待したい。